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【映画】『木挽町のあだ討ち』はミステリーじゃなかった。途中で”味変”する、珠玉の邦画。

ささき

『木挽町のあだ討ち』を観てきた。

江戸時代のミステリーと聞いて、ドロドロの愛憎劇を想像していた。
ところが、全然違う映画だった。
観終わった後に「ああ、いい映画だったな」とひとり呟いてしまうような、
そんな作品の話をする。

この映画を観ようと思ったきっかけ

主演が柄本佑だったから、というのが正直なところだ。

熱狂的なファンというわけではない。
ただ、最近観た邦画にやたらと柄本明(父)が出てくる。
『レンタル・ファミリー』『盤上の向日葵』……ここ最近観た邦画のほぼ全部に登場している。日本映画界は柄本明と渡辺謙を酷使しすぎではないか、と思いつつ。
今回は息子の方を観てみようと、そんな斜め上の理由で選んだ。

これを読んでいるみなさんには、そんな理由で映画を選ばないでほしい。
できれば前評判で絶賛されている作品を選ぶことをおすすめする。
去年で言えば『国宝』。
あれはよかった。

あ、ごめんなさい。続けます。

物語のざっくりした話

父を殺された若き息子が、見事に仇討ちを果たす。
これが「木挽町のあだ討ち」事件だ。

仇討ちされるのは悪人顔の北村一輝、果たしたのは若く美しい長尾謙杜。
見た目だけなら完璧な美談に見える。

ところが、この事件にどうも腑に落ちない点がある。
そんな疑問を持った元藩士(柄本佑)が、事件の舞台となった芝居小屋で聞き込みをしていくうちに、隠された真相が少しずつ明らかになっていく。

観進めるにつれて、こんな疑問が浮かんでくる。

「あれ、殺されたやつ、めちゃくちゃいいやつじゃないか?」
「でも、殺した若者も、いいやつじゃないか?」
「なんで? おかしくない?」

気づけば完全に、柄本佑目線で物語を追っている。

聞き込みをする相手はクセが強い。
だけど、みんないい人たちだ。
誰が嘘をついているのか。
なんのために?
そんな気持ちで前半は進んでいく。

この映画の本質は「人情」だ

ミステリーだから、凄惨な愛憎劇が来ると思っていた。
ところが途中から、謎解きよりも「人の心」にフォーカスが移っていく。

芝居小屋の役者や裏方たちが、誰かを守るために一致団結する。
命がけで「嘘」をつく。
その嘘が、実は誰かを救うための武器になっている。

嘘=悪、ではない。
嘘は人を助けるための道具にもなる。
そんなことをこの映画は、説教くさくなく、粋に見せてくれる。

営業の仕事で客の前では素でいられないこと、誰かのために「相手が欲しい言葉」を選ぶこと。日常にも同じ構造はある。
この映画を観てから、そんなことを考えてしまっている。

そして、こんなことを映画からインスパイアしている自分のことを、
少しかっこいいと思ってしまっている。

あえて言う。セット感が惜しい

良かった点ばかりでは正直なレビューにならないので、気になった点も書いておく。

室内のシーンはいい。
芝居小屋のセットは雰囲気があって、違和感がない。
ただ、外のシーンに作り物感があった。
江戸の裏路地の泥臭さや、生活の匂いのようなものが薄い。
綺麗すぎる。

脚本は面白い。役者もいい。
だからこそ、映像の質感でもったいないと感じてしまった。

そんな細かいところにケチをつけるだなんて、なんて小さな人間なのだろう。
そう思っている。

だけど、あえて言わせてほしい。
こういう細かい描写にこだわった作品にこそ、神が宿ると。

こんな人に観てほしい

複雑な伏線が最後にピタッとはまる爽快感が好きな人、
ドロドロしていない後味のいい邦画を探している人、
誰かと観た後に話が弾む映画を探している人。
そういう人にはかなりおすすめできる。

ひとりで観ても十分楽しめるし、誰かと観ても話しやすい。
どちらにも対応できる、珍しい作品だと思う。

観終わった後に、気持ちが晴れやかになる。
そんな作品を、大切な人と共有してほしいと心から思った。

ちなみに筆者は一人で観に行きました。
なので、大切な読者の方と共有している次第であります。

ひとり映画をもっと楽しむために

この映画を観て、もう少し音にこだわりたくなった。
映画館の音響は素晴らしい。

音の世界が変わるだけで、作品の完成度は3割増しになると思っている。

こういう感覚、わかってもらえるだろうか。
いつもと同じ体験でも、環境を少し整えるだけで、まったく違うものに見えてくることがある。映画もそう。
座席でも、音でも、ちょっとした工夫が没入感を変える。

おすすめのイヤホン・ヘッドホンをGEARで紹介しているので、気になる人はのぞいてみてほしい。

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