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【INSPIRE】『プロジェクト・ヘイル・メアリー』レビュー|SF初心者こそ映画から入ってほしい、知的好奇心が止まらない作品

ささき

本屋で見つけたある本。

ハリウッド俳優のライアン・ゴズリングが表紙の『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上下巻。
「SFの金字塔」
「映画化決定」
「公開前に必ず読んでほしい」

そんな言葉を見かけた。

言葉に惹きつけられ、表紙に惹きつけられ、必ず観ることになると確信して購入した。

乗せられた。
完全に。

結果、映画が公開してチケットを取った時点で、下巻がまるまる残っているという事態になっていた。
暇があれば小説を読んだ。
わからない知識はわからないまま読み進めた。

そして映画館へ行く日。
あと30ページ足りなかった。

映画を観終わったその日に、小説も読み切った。

つまり、小説も映画も両方体験した人間の感想だ。
忖度なしで書いていこうと思う。

この物語、ざっくり言うとこうだ

想像通りのSF、サイエンスフィクション。

地球を救うために宇宙船で問題解決に向かった先で、宇宙人と出会う。
ふたりは協力して、それぞれの故郷を救う。
そんな話だ。

ざっくり言うとこんな感じだけど、
しっかり書くとあと10日は語らないといけない。

なぜ宇宙に行かなくてはいけないのか。
未知の生命体はどういう性質なのか。
何がどうなって地球が危ういのか。
それだけじゃない。
普段聞き慣れない科学の用語、数学的な知識がすごく必要になってくる。
詳しくは小説を読んでほしい。

この膨大な知識を映画でどう表現するのか。
時間的に足りないのではないか。
それこそ海外ドラマのような描き方じゃないと表現できないのではないか。
そう思っていた。
そういう意味でも楽しみにしていた作品だ。

正直に言うと、小説を読んでいても頭の中で具現化できない部分が多かった。
宇宙船の形、素材、生命体の見た目。
途中で諦めた。
適当に想像して、映画の映像と自分のイメージにどれくらい差があるか、それを楽しむことにした。

カッコつけずに言うと「映画館で補完すればいいか」そう思っていた。

一言で言うなら、小説の方が面白い

映画の感想を率直に言う。
小説の方が面白い。

言葉のまま捉えられると困るので、この映画の名誉のために補足しておく。
小説の方が深い。
そういう意味だ。

理由は2つある。

1つ目は、原作を映像で表現するのが難しい。

小説を読んでいたからこそ、「これをどうやって映像にするんだろう」と思っていた箇所が何箇所もあった。
結果、そういう部分はかなりカットされていた。

スター・ウォーズのような完全フィクションなら映像化が成立する。
でもこの作品は、今日の科学とかけ離れた技術の話ではない。
だからこそ、宇宙空間の映像化にすでに限界がある。
小説では重力を船内に発生させるための説明が事細かに書かれているが、映像ではそうはいかない。

2つ目は、時間が足りない。

この物語は専門知識を要求する。
小説では理にかなった説明をしてくれるが、映画ではそうはいかない。
どんな人にも受け入れられるものにしなくてはいけないから。

例えばアストロファージ。
この新たに発見された生物の説明だけで相当な時間がかかる。
太陽の熱エネルギーを吸収してしまい、あと数十年で地球の温度が数十度下がってしまうほどの影響を与える生物だ。
太陽系どころか、他の恒星、宇宙全体もこの生物のせいで死んでしまいかねない。
そこで、この生物の影響を受けていない星に行って、なぜ影響を受けていないのかを調べるために宇宙へ出た。

宇宙船で目覚めるところから物語は始まる。

ここまでで、すでにかなりのボリュームだ。

ここから、地球と同じように滅亡の危機に陥っている星の知的生命体と出会う。
まずはコミュニケーションの取り方から始まって、二人で協力して真相を解明していく。
原因を突き止めたら、地球の問題解決のために知恵を振り絞る。
そこにはいろいろな問題が待ち受けている。
大ボリュームだ。

時間の制約がある以上、映画では要点だけを摘む。
それだけだと面白くならないからエンターテイメント的な要素を加える。
出来上がった作品は、結果浅くなってしまう。
しょうがない。

これらのどうしようもない理由で、この作品は小説を超えることができなかった。

この物語の面白さは3つある

小説を読んで気づいた面白さが3つある。

1つ目はサイエンスの面白さ。
アストロファージという新たな生物の発見と、それが持つ二面性だ。
太陽系を蝕む脅威でありながら、最高のエネルギー源でもある。
害と希望が同居している。

2つ目は主人公がなぜ宇宙船に乗ったのかというミステリーだ。
過去の回想ではずっと乗りたくないと言っている。
なのになぜ乗ることになったのか。答え合わせがしたくてしょうがない。
でも全然教えてくれない。だから読まずにはいられない。
自動的に前へ前へと読み進める装置になっている。

3つ目は宇宙人ロッキーとの交流と共生だ。
言葉も文化も全く違う生命体と、あの手この手でコミュニケーションを取っていく。
知的好奇心が止まらない。

映画ではこの3つがどう描かれたか

率直に言う。
1と2はほとんど生かされていなかった。

1のサイエンスの面白さは、時間の制約上どうしても説明が省かれる。
専門知識を要求するこの物語を、幅広い観客に届けようとすると、どうしても表面をなぞるだけになってしまう。

2の主人公が船に乗った謎も、映画では掘り下げが薄かった。
結果から言えば、無理やりクルーにさせられた。誰もが乗りたかった宇宙船に、しょうがなく。地球を救ったヒーローが、全然ヒーロー感がない。
そのギャップがこの物語の核心だと思っているが、映画ではそこが伝わりにくかった。

一方で3のロッキーとの交流は、映画オリジナルの表現が加わってコミカルに描かれていた。
巨大な宇宙船から逃げようとしてもすぐに追いつかれるシーン、
初めて対面した時にどちらも驚くというお約束のシーン、
ペットのような動きで愛くるしさを表現していた。

ただ、小説のロッキーには演算能力の高さや、地球のテクノロジーはないが生物としてのスペックが高いという設定に、主人公がリスペクトを持って接していた。
映画ではコミカルに描く都合上、ロッキーがどこかペット的な存在に見えてしまった。
少し人間至上主義的な描き方に感じてしまったのは、正直なところだ。

結論:映画を観る前に小説を読む必要はない

個人的な感想を言うと、小説と映画は全く違う性質を持っている。
楽しみ方が違う。

小説はSF作品をとことん楽しみたい人におすすめだ。
ただし、化学的知識や数学的知識がそれなりに必要になる。
学生時代を思い出しながら、ワクワクしながら楽しんでほしい。

逆に、学生の頃に元素記号を見ると拒否反応が起きていたような人は、お金の無駄になるので読まないことをおすすめする。

そんな人は映画館へ行こう。
すでに公開が終わっているなら、各サブスクで楽しんでほしい。

「ロッキー可愛いね」と恋人同士で楽しむのもよし。
「主人公のライアンが大好き!」と女の子同士で楽しむのもよし。
「どうやったら40代でこの色気が出るんだろう」と思いながらひとり映画を楽しむのもよし。

気軽に観てほしい。

そして映画を観て少し気になったら、そこで初めて小説を読む。
その順番が合っていると思う。

科学が好きだという人は、この本を読んだ後に最高に気持ちよくなることを約束する。

小説を読むならこちらから

上下巻に分かれているので、必ず両方用意してから読み始めてほしい。
上巻を読み終わった瞬間に続きが読みたくなるから。

Kindleでも紙の本でもどちらでもいいと思うが、Kindle版を載せておく。

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