『爆弾』レビュー〜「爆発したって、別によくないですか?」に、あなたは何と答える〜


こんにちは、ソロラボのさっちです。
あなたは「爆発したって、別によくないですか?」と言われたら、どう思いますか?
今回観てきたのは、映画『爆弾』。
「このミステリーがすごい!」で1位を獲得した呉勝浩さんの同名小説を映画化した話題作。
正直に言うと
観る前は「よくある爆破パニック映画でしょ?」とタカをくくっていた。

完全に舐めてました。すみません。
しかし、観終わった後に残ったのは、爽快感でも恐怖でもなく、「価値観を揺さぶられたザラつき」。
元役者としての視点で、この映画の「演技の凄み」と、作品が投げかける「残酷な問い」について、マニアックに解説していこうと思います。
- 「よくあるパニック映画でしょ」と侮っている人
- 観たあとに、じっくり考え込める映画が好きな人
- 「正義」や「倫理」を疑う、重厚なテーマが好きな人
- 佐藤二朗さん・染谷将太さんらの怪演を浴びたい人
- 原作小説とセットで、一人で深掘りするのが好きな人
評価表
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 満足度 | ★★★★☆ |
| 映画館で観るべき度 | ★★★☆☆ |
| ひとり向き度 | ★★★★★ |
※スコアは暫定です。目盛り・点数はお好みで調整してください。
あらすじ:99分間の「命の選別」クイズ
物語は、酔っ払った中年男が警察に連行されるところから始まります。 男の名はスズキタゴサク。
取調室で彼は、ふざけた顔でこう予言します。
「霊感で事件を予知できます。都内のどこかに爆弾が仕掛けられています」
当然、警察は信じません。しかしその直後、本当に爆発が起きる──。
そこから始まるのは、IQの高い刑事・類家(山田裕貴)と、正体不明の怪物・スズキ(佐藤二朗)の心理戦。 そして、爆弾を探して走り回る現場の刑事たち。
スズキが出す「クイズ」に正解しなければ、次の爆発が起きる。
しかし、スズキは笑いながらこう言い放つのです。
「爆発したって、別によくないですか?」と。

いいわけないだろ!
そう思うんです。最初はね。
映画が投げかける「残酷な問い」
この映画の真骨頂は、爆破シーンの派手さではありません。
犯人であるスズキが、警察(=正義)、そして画面越しの僕たち(=観客)に突きつけてくる「問い」にあります。
「自分に関係ない不幸」を、僕らはどう見ているか?
スズキの狂気的なセリフ、「爆発したって、別によくないですか?」。
これを聞いて、あなたはどう思いますか?
「ふざけるな」と怒るでしょうか。

僕も最初はそんな風に思ってました。
でも、少し意地悪な見方をしてみましょうか。
日々ニュースで流れる災害や事故。
もちろん「かわいそう」「大変だ」とは思います。
でも、自分の生活や仕事を投げ打ってまで助けに行く人は、どれくらいいるでしょうか?
結局のところ、当事者じゃなければ「関係ない」。
極論を言えば「起きても、別によくないですか?(だって自分の半径5メートルは無事だし)」と、心のどこかで思っていないでしょうか?

認めたくはないけれども、僕の中にも薄暗い部分はある。
スズキという怪物は、そんな僕たちが隠している「無関心」という名の残酷さを、笑いながら引きずり出してきます。
だからこそ、この映画を観ていると心がザラザラするのです。
【元役者視点】ここが凄い!演技の解剖学
職業柄、どうしてもストーリーより「芝居」に目がいってしまうのですが、この作品のキャスト陣は「全員、怪演」でした。

職業柄と言っているが、現在はサラリーマンです。
怪物・スズキタゴサク(佐藤二朗)
普段はコメディリリーフの印象が強い佐藤二朗さん。
ですが、今回は完全に「あっち側の住人」でした。

いつもの佐藤二朗はどこへ?
サイコパスや殺人鬼といった「架空の存在」を演じるのは、実は一番難しいんです。
お手本が近くにいないから。 一歩間違えればコントになってしまうギリギリのラインを、彼は「得体の知れない不気味さ」で見事に成立させていました。

演技の引き出しが多すぎる。
圧倒的な「引き算」の演技(染谷将太)
刑事・等々力役の染谷将太さん。
『ヒミズ』の頃から嫉妬するほど上手い役者さんですが、今回は「ただ、そこにいる」という凄みがありました。
派手な声を出すわけでも、大きな動きをするわけでもない。
なのに、画面の端に映っているだけで「何かが起きそう」な気配を漂わせる。

そこに存在すること。
これが一番難しい。
精度が違うんでしょうね。プロとアマチュアとは。
「存在感」という才能を、存分に堪能しました。
【辛口注意】映画好きとして「あえて」言いたいこと
ここからは、映画を愛するがゆえの「大人の辛口レビュー」です。
※作品の結末には触れませんが、演出のネタバレを含みます。
まだ映画を観ていない方は、ここで読むのを止めるか、観終わってから戻ってきてください。

観てない人は戻るボタンをクリックしてね。
① 「リアルすぎる」のは、本当に正義か?
今の映像技術は凄まじいです。
この映画でも、爆発で手足が欠損する描写などが、あまりにリアルに描かれています。 止血の様子、溢れる血の量…。
技術としては完璧です。
でも、あまりにリアルすぎると、逆に「これ、どうやって撮ってるんだろう?」と、メイキングの方に意識がいってしまいませんか?
映画の魔法(没入感)が、技術の凄さによって解けてしまう瞬間があるのです。

嘘がわかる瞬間に現実に戻ってしまう。
できれば、ずっと夢の中にいたいんですよ。
「直接見せずに、想像させる恐怖」という演出があっても良かったのではないか。
大人の映画ファンとしては、そんな「余白」が欲しくなりました。
② 日本映画の「暗さ」について
最近の邦画は「正義を疑う」「倫理をひっくり返す」という、重厚で暗いテーマが王道になっています。
もちろん、今作は考えさせられる素晴らしい作品。
でも、ただでさえSNSが炎上し、暗いニュースが溢れる現代社会。
映画の中でまで、こんなに重い現実を突きつけられ続けると、ふと「スカッとする王道が見たい!」と叫びたくなりませんか?
社会風刺もいいけれど、たまには「映画のためにゼロから作られた、極上のエンターテイメント」を浴びたい。
そんな「無い物ねだり」をしてしまうほど、この映画は現代社会の闇を精巧に映し出していました。

こんなところにケチつけるのはいかがなものかと。
これじゃ、僕はクレーマーですよ。
まとめ:自分の”黒い部分”を見つけられる神映画
映画『爆弾』は、ただのパニック映画ではなく、「自分の倫理観を試される踏み絵」のような作品だった。
原作小説も読みましたが、映画は驚くほど忠実に作られています。
だから、映画を観てスズキという怪物にもっと会いたくなったら、原作とセットで味わうのもおすすめです。

どっちから先でも、ちゃんと沼れる設計。
でも、それより何より伝えたいのは—
こんなにも魂を揺さぶられる映画は、そうそうありません。
好きな俳優がいるとか、話題だから、とか。
そんな理由はどうでもいい。

シンプルにいい作品だから、25歳以上の大人は絶対に観た方がいい。
ひとり映画をもっと楽しむために
この映画は、絶対に「一人」で観てほしい。
だって、「爆発したって、別によくないですか?」という問いに、正解なんて無いから。
隣に人がいると、自分の中に浮かんだ「冷たい本音」を、つい隠してしまうんです。

実際に僕もその一人。
一緒に観た人がいたなら、その人の感想に合わせちゃう派。
でも、一人なら、その居心地の悪さと、とことん向き合える。
映画館の暗闇で観た人も、これから観る人も、この作品と向き合う時間は一人がいい。

今すぐ再生ボタンを押してみて!
劇場での熱狂は終わってしまったけれど、この怪物には今、Netflixで会えます。
(しかも独占配信。他では観られません)
一人の夜に、そっと再生してみてください。







