『盤上の向日葵』レビュー〜役者は最高。なのに悔しい、原作未読でも気づいた3つの違和感〜


こんにちは、ソロラボのさっちです。
突然ですが、あなたは「高級食材ばかり使ったのに、なぜか味がぼやけている料理」を食べたことはありますか?

突然の比喩?!
そう思ったことでしょう。
今回観てきたのは、映画『盤上の向日葵』。
柚月裕子さんのベストセラー小説を原作に、坂口健太郎さん、渡辺謙さんら超豪華キャストが集結した話題作。
結論から言います。
役者さんの演技は、震えるほど素晴らしかったです。
ですが、映画としての構成は……正直、悔しさが残る作品でした。

な、なんて、もったいないんだ!
今回は、原作を読んでいない「映画ど素人」の僕が感じた、「なぜこの映画は名作になり損ねたのか?」という違和感について、忖度なしで語ります。
※愛ゆえの辛口レビューです。
※後半はネタバレを含みますのでご注意ください。
- 邦画の「役者の本気の演技合戦」を浴びたい人
- 坂口健太郎さん、渡辺謙さん、土屋太鳳さんらの芝居が好きな人
- 完璧な映画より、「惜しい映画」を分析するのがちょっと好きな人
- 原作ファンで、映画版が気になっている人(ただし期待値は少しだけ下げて)
- 観たあとに「自分ならこう撮る」と一人で妄想したい人
評価表
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| 満足度 | ★★☆☆☆ |
| 映画館で観るべき度 | ★★★☆☆ |
| ひとり向き度 | ★★★★☆ |
あらすじ:異才の棋士と、伝説の真剣師
山中で発見された白骨死体。その傍らには、名匠が作った貴重な将棋の駒が残されていた。
捜査線上に浮かんだのは、異例のスピードで将棋界のトップに上り詰めた天才棋士・上条桂介(坂口健太郎)。
そして、かつて裏社会で生きた伝説の真剣師・東明重慶(渡辺謙)。
過酷な運命を生きた二人の男と、死体の関係とは─?
……と、あらすじだけ聞けば「重厚なヒューマンミステリー」の傑作になる予感しかしませんよね。
しかもキャストが凄すぎる。

面白い作品としか思えない。
題材も将棋で、さらに真剣師とかいうアウトローな設定。
観る前からワクワクが止まらなかった。
ここが素晴らしい!「演技のドリームチーム」
まずは、手放しで絶賛させてほしい。
この映画、「日本の役者の底力」を見せつけられる作品です。
- 渡辺謙さん、佐々木蔵之介さん、柄本明さん…
もはや「演技のオリンピック日本代表」です。
画面に映るだけで重厚感が違う。 - 主演・上条桂介(坂口健太郎)
孤独と狂気を秘めた天才棋士。
彼の「目」の演技には引き込まれました。

最高の配役に思える。
個人的MVP:土屋太鳳さん
そして何より驚いたのが、桂介の元婚約者を演じた土屋太鳳さんです。
正直、最初は気づきませんでした。

「あれ、この女優さん誰だろう?」と本気で思ったほど。
いつものキラキラしたオーラを完全に消し去り、作品の中に「生活者」として溶け込んでいました。
映画を見終わった後、じわじわと「あの演技、良かったな…」と反芻してしまう。
こんなお芝居に憧れていた時期が、僕にもありました。

昔の話ですが、僕もお芝居をかじっていた時期がありました。
派手さはないのに、印象に残るってすごくないですか?
最高のお芝居を、ありがとうございます。
【辛口注意】原作未読でも気づいた「3つの違和感」
映画の核心や演出について、愛のあるダメ出しをしています。
未見の方はご注意ください。

ダメ出しって言葉はあまり好きではないですけれども
ここではあえてダメ出しと言わせてほしい。
役者が最高だったからこそ、脚本・演出のアラが目立ってしまったのが本当に悔しい。
僕が感じた「ノイズ」は、大きく分けて3つです。
① 意味深すぎる「右耳を触るクセ」
恩師(小日向文世)が将棋を指す時、必ず「右耳を触る」んです。
カメラもわざわざドアップで抜くので、観客は思いますよね。「あ、これ絶対伏線だ」と。
- 師弟の絆の証?
- 犯人を特定するヒント?
……結論、何でもありませんでした。

う、嘘だろ…
あんなに引っ張っておいて?
強いて言うなら、主人公も同じクセを持っているので意味はあります。
が、物語の核心には一切絡まない。

こういう細かい所作は、強調すると台無しになると思うんです。
気づく人だけ気づけるような引き算的演出の方が、僕は良かったと思いますね。
② 演出過剰な「マンガ的リアクション」
将棋の対局シーン、特に新人王戦での演出が気になりました。
負けた相手が、まるでアニメのように「ガクッ!」とわかりやすく落ち込むんです。
ここはプロを目指す奨励会。
人生をかけたヒリヒリする場所です。
そんな場所で、あんなコメディみたいなリアクションをするでしょうか?
重厚な世界観が一気に「B級映画」っぽくなってしまい、正直、少し冷めてしまいました。

わかりやすいは大事なことだけれども…
③ 刑事(佐々木蔵之介)のキャラ設定がブレブレ
佐々木蔵之介さん演じる刑事。
登場シーンでは「駅弁を食べたあとで、食い物の話をする」。
そして部下にツッコミを入れさせる。
そんな、少し軽妙なキャラとして描かれています。
「お、今回は重いテーマだから、この刑事が息抜き担当なのかな?」と思いきや……
その後はずっとシリアス。ただの「できる刑事」でした。

最初のキャラ付けは一体…
原作にある要素を無理やり詰め込もうとして、消化不良を起こしている印象を受けました。

時間的制約で表現しきれないなら、やらない方がいいときもあると思う。
もし僕が監督なら、こう撮る(妄想)
素人の戯言だと思って、聞き流してください。
でも、この映画が名作になるためのピースは、実は「視点の変更」にあった気がするんです。

しばらく素人の戯言にお付き合いください。
主人公は「若手刑事(佐野)」であるべきだった
現在の映画は、天才棋士・桂介の過去を追う構成になっています。
でも、感情移入すべきは、その壮絶な人生を目撃する若手刑事(高杉真宙)の方ではないでしょうか?
- ベテラン刑事に振り回されながら捜査を進める。
- 桂介のあまりに過酷な過去を知り、同情してしまう。
- 「正義とは何か? こんな悲しい男を逮捕すべきなのか?」と葛藤する。
この「観客と同じ目線」を持つ若手刑事を主軸にすれば、ラストシーンの余韻もまったく違ったものになったはずです。
桂介は「理解不能な天才(ミステリー)」として描き、刑事がその謎を解く中で成長する。
そういう構造の方が、この豪華キャストを活かせたんじゃないか……と、勝手に悔しがっています。

基本的に主人公である桂介は過去回想でしか登場しないですからね。
まとめ:日本映画、もっとやれるはずだ
文句ばかり言ってしまいましたが、それは「日本映画への期待」があるからです。
Netflixなどの配信が主流になり、「ながら見」コンテンツが増える現代。
そんな中で、映画館という「逃げ場のない2時間」で物語に没入できる体験は、本当に貴重です。
日本の役者は世界レベルです。
原作小説も面白い。
だからこそ、脚本と演出さえ噛み合えば、世界を震わせる傑作がもっと生まれるはずなんです。
『盤上の向日葵』は、「素材は最高級なのに、調理法で損をした」惜しい作品でした。
でも、役者さんたちの演技合戦を見るだけでも、チケット代の元は取れます。

食材は最高なんですよ!
職人たちは一級品。
製作側が殺してしまうのは、よくないね。
ひとり映画をもっと楽しむために
この映画、正直に言うと、誰かと観たら少し気まずいかもしれません。
隣の人が物語に涙している横で、こっちは「今の演出、いる…?」なんて考えていたら、感想を合わせるのに苦労します。
でも、一人なら関係ありません。
納得いかないカットに一人で首をかしげ、素晴らしい芝居に一人で唸り、帰り道で「僕ならこう撮るのに」と勝手に妄想する。
この”脳内リメイク大会”を、誰にも邪魔されずに開催できるのが、ひとり映画の最高の贅沢です。

はい、そうです。僕はちょっと変わっております。
特に、こういう「惜しい映画」こそ、一人でじっくり味わう価値があります。
ぜひ一度観て、あなたならどうリメイクするか、妄想してみてください。
映画館での公開は終わりましたが、今はAmazonプライムビデオで観られます。
まだプライムを使ったことがない人なら、30日間の無料体験で観てしまうのが一番おトクです。(体験期間中に解約すれば0円)







